★ボイトレを始める前に~基礎知識その1★★ボイトレを始める前に~基礎知識その1★ のコーナー ここでは、私がいままでのボーカル生活の中で身につけた、ボーカリストに必要な知識や体のメンテナンスなどについて、かいつまんでご紹介します。 ★まず最初に息ありき★ 前回、「私のレッスンは『歌のレッスン』ではない」というようなことを書きましたが、それはどういうことなのか、お話してみたいと思います。 ☆『声』の前に『息』が重要 まず大前提として勘違いをしてはならないことがあります。 歌がうまくなりたい、という希望はよく聞きます。では、歌がうまいってどういうこと?と聞くと、声量を増やしたいとか音域をのばしたいとかいう答えが返ってきます。 確かに、歌っているのに聞こえないくらい か細い声では説得力がありません。 では一体、「大きい声」とはなんでしょうか。 間違った発声でノドでがなってしまうと、一見声が出ている気がします。ノドに負荷をかけているので、筋肉や声帯もほどよく疲労し、「使った」という気がしてしまうのです。 でもそれは、そばで(自分のごく狭いまわりで)鳴っているだけ。マイクを通してみると、耳に痛かったり、思っているほどマイクにのらない(音量が出ていない)ことが多々あります。ただ大きい声とボリュームのある声は違うのです。 同様に、単に声量のない声と 芯の通ったウィスパーもまったく違うものです。 耳に痛くないボリュームのある声・遠くまで届く芯のあるウィスパーに共通しているものは何だと思いますか? それは「息がしっかり流れている」ということです。 息をどれくらい流すか、どう流すかによって声の大小や表情が作られるのです。ノドの中にある声帯は息を声に変換する器官ですが、振動数によって音の高低を出すだけで、声の強弱をつけるのは声帯でやることではありません。 この点をしっかり心にとめておかないと、ボイトレを受けても効果半減、自己流でやったりするとノドをつぶしかねないので注意が必要です。 ☆やりたいことを実現させられる体を作ることが必要 「声」よりもまず「息」をしっかり流すことが大事だと上で述べました。 そのためには、息をしっかり流して支えていられる体を作ることが大切です。 私のレッスンは、実際に声を出す前にストレッチをかなりの時間をかけてやります。ゴスペル教室では10~15分はその時間にあてます。個人レッスンでも、最初に必ず体をほぐしてもらいます。 凝り固まった体では、息を吸ったり吐いたりするのに使う筋肉を 十分に動かすことが出来ないからです。 生徒さんも実際にこのストレッチをすることで、体が軽くなったり温まったりすることを実感するようです。 息を自由にコントロールできるようになると、あとは声帯を鳴らすだけで声になります。ノドに負荷がかかっていないのに、響いて芯のある声が出るようになります。(流した息を鼻腔・口腔・胸などに共鳴させることも同時に行います。この共鳴についてはあらためて・・・) 最初は「こんなにラクでいいのか」と、とまどってしまうくらいです。 多くのボイストレーナーやその手の本で 「ノドを使うな、お腹を使え」 と言っているのはこのことなのです。 頭にうかんだ様々な表現を自分の体を思い通りに動かして表現していくためにも、一番基礎となるのは体づくりです。 体が出来てくれば、自然に音程なども安定してきます。体作りは毎日少しずつ、非常に時間のかかるものです。 ここで焦って先に進み、音程練習やフェイクの練習ばかりしてもかえって遠回りです。目標とするボーカリストや好きな音楽をたくさん聴いて、表現の引き出しをためておくのは大切ですが、小手先でマネをしても、結局自分の表現にはなりません。 バンド活動などで人前で歌うことを定期的にやっている人は、ここの所を焦ってはいけません。 まずは、やりたいと思ったことや出したい音を実現出来るだけの息を流せること、そしてそれを支えられる体を作り上げていくことです。 次回は体のメンテナンスなどについてお話します。 (つづく) |